『バベルの塔」創世記11章1−9節

完成に終わったバベルの塔。神は言語を混乱(バラル)させ、神のようになろうとする人間の野望を止められた。巨大な塔の建設は、おそらく権力の座にある者がその支配下にある者たちを強制労働させていたことによるものと考え得る。だとするならば、人間は互いの言葉が通じなくなった事で、世界に散らされたというこの原初史は、人間同士が相手をモノのように扱うという的外れな生き方から守られ、解放されてゆく救いの物語として現代に問うことができよう。・・・9年前、「安全だ、安心だ」とする言葉が乱れた。人間の過信、驕りから来る言葉が通じなくなったのだ。神の創造物を破壊することによってエネルギーを得ようとするシステムの背後では、必ず誰かが犠牲にされている。今も廃炉のために命の危機に晒されながら、ある意味で強制労働をさせられている現状がある。災害時や緊急時において顕在化する社会の歪み。残り少ない資材を求め必要以上に欲してしまう人間のエゴ。巨大なマモン()を得ようと欲望を積み重ね続ける塔の建設は中断されなければならない。そこでは神ではないものが神とされてしまう。神を畏れて歩むことのない人間の業績は未完に帰結する。既に与えられている恵みを見つけて謙虚に、互いの命を尊び合う道を歩みたい。神は常に、われらを救いへと導いておられる。2020.3.8