『密です。イエスさま』:マルコによる福音書3章7−12節

「密です。」とは、コロナウィルス対策として互いに距離を取ることを促す言葉となった。<①宗教と政治の密>イエスの時代、ファリサイ派と呼ばれる宗教指導者とヘロデ派という政治的な影響下にある者たちは密接な関係となっていった。その目的はイエスの殺害であった(6節)。歴史上、政治と宗教が密着する所に平和はなく、むしろ人命が奪われるという方向に向かうということが繰り返されて来た。われらは「政教分離の原則」に立ち、密を回避するための距離が必要だ。<②群衆との密>主イエスのもとには夥しい群衆が殺到(7-8節)。四方八方から押し寄せた群衆にとってイエスの存在は自分たちに利益をもたらす対象でしかない。病気の治癒や問題が解消されれば用済みとなり得る。群衆心理は「個別の出会い」を遠ざける。ガリラヤ湖畔にて押しつぶされそうになる主イエスは小舟に乗り、群衆と一定の距離を保たれた(9節)。そして、苦しさや辛さの中にあって求めてくる群衆の一人ひとりが抱く願望の根幹にあるところに触れるべく、かれらに福音の言葉を聞かせられた事であろう。神の恵みにより問題が速やかに解決することもあろうが、本当の救いは、主イエスご自身を知る「密なる出会い」を通してこそ得られる。「密」とはきめ細かく、行き届いていく状態を指す意味を含むが、主イエスは群衆と接しながらも、その一人と個別に出会い、親密な関係へと招かれる。実にきめ細く日々配慮され、その場限りではなく、全生涯にわたって神の愛が行き届いていく関係として、共に歩もうとされるのだ。<③メシアの秘密>「あなたは神の子だ」と叫びながらひれ伏す汚れた霊どもに、主イエスはまだ「広めないように」と制される(12節)。われらは主イエスの十字架と復活を通してはじめて、このお方を神の子、救い主と告白するのである。(2020.8.23)