風薫る五月、木漏れ日の下で心地よい風を感じる時、季節が差し出す至福を見つける。現在放映中の朝の連続テレビドラマ小説「風、薫る」のヒロイン、一ノ瀬りんのモデルは大関和(ちか)1858-1932)である。彼女はキリスト教的献身をもって、かつては賤業と見なされていた看護の地位向上に貢献し、「日本のナイチンゲール」と呼ばれた。明治時代、彼女は家同士の縁談を拒めず、二人の子の母親となるが、当時の封建的な家制度や夫の妾の存在に心を痛め、二人の子を連れて家を飛び出す。それは生きる基盤を失うに等しいことであった。だが、すでに神に見出されていた和は、上京したのち植村正久牧師に出会う。そこで聖書が語る「神の愛」を見出したのであった。彼女は伝道師を志すも、今求められているのは社会的にキリストの愛を実践することと確信し、看護の道に自分の天職を見つけたのであった。和は「私たち人間は、神によって造られました。この造り主なる神の有難い嬉しい愛と恵みを思う時、どうして空しく之を受けておられましょう。どうぞしてこの御恩の万一でも報じたいと思いましたところが、父なる神は霊にましませば、ただその戒めを報じて、其隣人を愛さねばなりません」(女子文壇・第7年第7号)彼女は神の愛と自分の使命を見つけた喜びを胸に、感染症の患者にも分け隔てなく接し、病床の患者は彼女が来ると春の風のような喜びが室内に届き、笑顔になったという。キリスト教矯風会の初代会頭矢嶋楫子らと共に女性の自立を目指す女子教育、廃娼運動、軍縮活動にも尽力した。きょうは母の日、誰かのために自分を捧げる愛の尊さを想う。われらもまた、神の愛の喜びにあずかり、恵みのうちに、自分自身の生きるべき使命を見出し、平和をつくり出す道を共に歩みたい。(2026.5.10-母の日-)
