『境界線から響く賛美』:ルカによる福音書17章11-19節

現代社会には、目に見えない無数の境界線が引かれている。病む人と健やかな人、仲間と部外者、成功した人と挫折した人という線引きである。人は自分が線のどちら側にいるかに一喜一憂し、ときに心の中に分断の壁を築いては孤独を深めていく。聖書には、まさにその境界線上で起こった劇的な出会いが記されている。舞台はサマリアとガリラヤの間の空白地帯。そこには社会から隔離された十人の重い皮膚病を患った人々がいた。本来なら激しく敵対していたユダヤ人とサマリア人が、歴史や宗教の壁を越え、差別と苦難の中で一つの共同体を形づくっていたのである。イエスは彼らに祭司のもとへ行くよう命じられた。彼らはその言葉を信じて歩み出し、その途中で癒やされた。しかし、神を賛美しながら引き返し、イエスの足もとにひれ伏して感謝したのは、ただ一人のサマリア人だけであった。九人は失った日常を取り戻すことを急いだが、この一人は恵みを与えてくださった方を見失わなかったのである。現代にも多くの分断がある。しかし主イエスは、人が引いた境界線のこちら側でもあちら側でもなく、その境界そのものに立って私たちを招いておられる。主の足もとこそ、誰も排除されない真の居場所であり、境界線を越えて賛美が響く、希望に満ちた新しい人生の出発点なのである。(2026.7.5)