「父の涙」ルカによる福音書23章44−49節

メル・ギブソン監督の映画「パッション」は、キリストの磔刑を写実的に描いている。本作の佳境の場面、神の御子イエスが十字架に架けられ、「父よ、わが霊を御手に委ねます」と言って遂に息を引き取られる。その瞬間、天から地上に向かって大きな雨の雫が「ボタっ」と十字架の下に落ちるシーンが印象的だ。独り子の死に「涙」する父なる神の愛を表現しているのだろう・・。シンガーソングライターの岩渕まこと氏の楽曲に、「父の涙」がある。「♩父が静かにみつめていたのは 愛するひとり子の傷ついた姿。人の罪をその身に背負い 父よ、かれらを赦してほしいと。十字架からあふれ流れる泉 それは父の涙・・・」娘に脳腫瘍が見つかり、愛する子を亡くした耐え難い痛みの経験。それは独り子の死をみつめるしかない父なる神の愛に向かった。主イエス・キリストを通して指し示された父なる神の愛。われらは、痛みや試練の中でこそ、神とその愛に出会う。試練には神とわれらを引き合わせる目的がある。「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである。」(ヨハネ3:16)