♪夕焼け小焼けの赤とんぼ」は、作詞した三木露風が現在から過去の幼い頃を思い浮かべている構成だ。5歳で母親と引き離され、おんぶして可愛がってくれた家政婦の姐やとも音信が途絶えている。夕暮れの黄昏時、ポツンと一人取り残される自分と赤とんぼの存在が懐かしさと寂しさを醸し出している。この詩を発表した翌年、露風はカトリックの洗礼を受けている。「とんぼ」は上から見ると十字架のような形をしている。もしかすると4番にある「とまっているよ竿の先」は、十字架を通して示された神の愛、自分と共におられたキリストのうちに真の安らぎを見出し、以前の寂しさとは質の異なる「新しい目」で自分の人生を捉え直したのかもしれない・・。「人は新たに生まれなければならない」と言われたニコデモは、当初イエスの言葉を理解できなかったが、7章ではイエスを弁護する立場、19章ではリスクを恐れず、大胆に十字架で死なれたイエスの遺体を引き取った人物として伝えられる。人がイエスを救い主と信じるまでには様々なプロセスがあるのだが、信じる者にとっての人生は、同じ経験も新しい視点で振り返ることができ、過去も現在も未来も一本の竿のように繋がって落ち着き、憂いや嘆きに囲まれた夕暮れ時さえもその先に恵みの光を見出す。(2023.10.22)