「その一羽さえ」:マタイによる福音書10章28−31節

「雀(スズメ)」は小さな存在でその寿命は約3年と短い。当時のユダヤでも一羽ではなくセットで売られるほど安価で、宗教的価値すらなかった。しかし主イエスは、その一羽さえも神がその命を大切に慈しんでおられることを告げられる。「父なしには、地に落ちることはない」(岩波訳)とあるのは、父、すなわち創造主である神は、雀が人知れず地に落ちて一生を閉じる時でさえ、その一羽に伴われている事を示唆している。われらは、どんな小さな存在であっても神の愛のもとに生かされている。主イエスは、小さく弱くされた者に価値をおき、自ら低くなって社会的に疎外された者と共に生き、最期は十字架にかけられて死なれた。その生涯によって、すべて無力な者、希望を奪われた者、見捨てられた者、絶望と孤独のうちに命を奪われた者たちに伴われたのである。どんなに辛い時、絶望する時、命が尽きる死の時にあっても、主イエスが一人ひとりの命に伴われる。われらは一羽の雀さえ慈しみを注がれる神の愛の受け手として救いに招かれている。主イエスわれらに先立ち、復活の命を示して永遠の希望へと招き、今日も「恐るな。わたしはあなたと共にいる」と語られる。(2023.10.29)


2023.10.29(日)礼拝講壇生花 by ISHIMARU