「取り消されない恵み」:ローマの信徒への手紙11章28−29節

現代社会では、人々は多くの約束や契約を交わす。しかし、これらは時として破られ、取り消される事がある。保険やスマホなど新しいガジェットや新プランが登場するたびに契約を見直したり、契約が変わる度に「同意」ボタンを押さなければ無効になる事もある。一方、神の選びや契約というのは。コロコロと変わる契約の世界に巻き込むモバイルプランのような類ではない。神が一度約束したならば、どのような状況にあろうとも変わらず、取り消されることがないのである。神は信仰の父アブラハムの選びに始まり、古代イスラエルとその子孫に対し恵みの契約を結ばれた。今や、キリストにおいて世界中の人々を救いに招いておられる。福音によれば、イエス・キリストの十字架によって人間の罪が赦され、神との和解が成立した。この神の救いの契約は、人間の過失や罪によって取り消されることのない恵みの贈り物となったのである。われらは不完全で過ちを繰り返す脆弱な存在であるにもかかわらず、神は誠実に関わり、その恵みを永遠に保ち続けてくださる。神の前では「この人間は除外」という削除やキャンセルボタンが存在しない。たとえ神に敵対したり、約束を破ったりする者でも受け入れ、愛し続けられる。この恵みを通じて、われらは争いや誤解を克服し、他者に対して愛と赦しを示す力を得る希望を見出す。キリストにおいてはユダヤ人もパレスチナ人もわれらも分け隔てはなく、神の愛の対象でしかない。全ての人々が取り消されない神の恵みの下で、敵とも共存する平和を創り出された主イエス・キリストに倣う隣人への愛を実践するよう招かれているのだ。(2023.11.5)


2023.11.5(日)礼拝講壇生花 by ISHIMARU