「あなたの願いは聞き入れられた」ルカによる福音書1章5−25節

ルカの福音書の著者は、すぐにイエス・キリストを登場させるのではなく、全世界にもたらされる救いを告げる序章を丁寧に記す。最初に登場する老夫婦のエピソードは、「大いなる喜び」に向かって徐々にライトアップされていく灯りのように、時折「喜び」の予感を抱かせながら読者を尽きる事のない「歓喜」へと導く。ザカリヤとエリザベトという夫婦は、神に忘れられたかのように長年祈っていた切実な願いが叶わぬまま、老年になっていた。その老夫婦に「喜び」が訪れる。とはいえ、長らく恥を受け、辛い思いをしてきた者にとって「喜び」はすぐに受け入れられるものではなく、時間を要する出来事となった。しかし、神の言葉は人間の都合によらず、状況によらず、人間の思惑や企てを超えて着々と実現に向かって進んでいく。この老夫婦に起こった出来事は、長年の祈りが聞き入れられただけではなく、この夫婦の生涯というスパンを遥かに超えて、神の遠大な全人類の救いの計画が実現する橋渡しとなった。かつて預言され、約束された救いが実現する過程において旧約と新約をつなぐ架け橋となり、ユダヤから全世界を包む救いの道を開く備えをもたらす事になるのである。われらの祈りや願いは神に届き、既に聞き入れられている。「歓喜」まで長い時を要するのは、神がそれだけ大きなスケールで偉大な救いと喜びのご計画を用意しておられるからに違いない。(2024.4.21)