『過去には感謝を、将来には肯定を』詩編107章19−22節

「夜は近きにあり。過ぎ去ったものにはありがとう。来らんとするものにはよし」国連の第2代事務総長ダグ・ハマーショルド氏の日記に綴られた言葉である。近年再び注目を集めている彼は、敬虔なキリスト教徒であり祈りの人であった。在任中(1953-61)は戦争回避に尽力し、アフリカ諸国の独立と発展、平和維持に多大な貢献をしつつもその途上で飛行機事故により召された。事故の真相は今もベールに包まれている。ノーベル平和賞が贈られたのは彼の死後であった・・・。苦悩の日々にあっても感謝を綴り、来るべき試錬や危機すらも肯定し得る生き方。機内での所持品は「キリストにならいて」というタイトルの書籍だったという。主イエスは待ち受けている受難を前に祈り、来らんとするものによし、と神の御心を受け止め立ち上がって進まれた。そこにわれらの救いの道が備えられた。年度末最後の礼拝日。過ぎ去った出来事のすべてに「ありがとう」とは言い難いかもしれない。「感謝のいけにえ」(詩編107:22)とあるが、感謝を一粒の麦としてささげる姿勢は、多くの喜びと平和を収穫する恵みとして回収される将来を切り開く。国難に遭ったイスラエルの民は、悲惨な運命に翻弄されながら善き事に思えない苦難の過去を、自らにとって<善き事として>受け止めた(詩編119:71参照)。幸いも不幸と思える出来事もすべて無駄とせずに価値ある意義を見出し、成熟への糧を頂いたのだと<感謝な事として>受け止めてみる。万事を益とされる神の御心に望みを抱きつつ、来らんとする新年度も<よし>として迎えよう。(2022/3/27)

2022/3/27(日)礼拝講壇生花 by ISHIMARU