『革命的賛歌』:ルカによる福音書1章39−56節

ルカ福音書は多くの賛美を生み出した書である。バッハやヘンデルをはじめ多くの著名な作曲家たちによって礼拝で用いられてきた。「マグニフィカート」と呼ばれるこの賛歌は、本書に登場する最初の詩である。この詩はヘブライ的な詩の形式で構成されており、従来ならば自分を苦しめてきた敵や権力者に対する神の裁きや敵の滅亡などの「報復」を願う言葉が続くところである(サム上2:1-10,詩編等)。しかしそのパターンが崩されて「報復」ではなく、神の救いと憐れみが終始宣言されている。その意味で「革命的賛歌」である。この賛歌は抑圧からの解放、平和を希求する賛美として歌い継がれてきたのだ。聖書はわれらを賛美と喜びに招く。賛美には力があり、賛美は人生に革命をもたらしていく。賛美は自ら断ち切ることのできない憎悪の連鎖、負の雲霧を一掃させる爽やかな風となって、救いの喜びと感謝に取り囲まれる日々を整えていく。それはわれらの力ではなく、神の偉大な恵みの力がわれらの中に解放されるからだ。Iさんは、今では信じ難いが、かつて彼女には「笑顔」がなかったというのだ。けれども24年前、創造主である神の招きをご自分のこととして受け止めた時から、革命が起こったかのように神の恵みに気付く喜びの人生を歩み始められた。今もオルガン奏楽や生花を通して神を賛美し、喜びをもって教会に仕え、笑顔で皆さまを励ましておられる。(2024.5.5)