「回心」ルカによる福音書5章27-32節

レビという人物は、「カネ」のために名声も家族も祖国も捨てた人物だったようである。当時、徴税人という職業はローマ帝国から委託を受け、植民地となっているユダヤの同胞から税を集めた。その際、規定の金額に上乗せして徴収した額を収入として懐に入れることができるので利回りも良かった。しかしその反面、敵国に加担する売国奴、さらに同胞から搾取して利益を得るような非道な人物として罪人とされていた。主イエスは徴税人レビに目を留め、「わたしに従って来なさい」と招かれた。すると彼は主イエスに従い、自分のために稼ぐだけの人生から、当時社会的に排斥されていた人たちをもてなし施す者に変えられた。後にマタイと呼ばれるキリストの弟子となる。一般にキリスト教ではこのような出来事を「改心」ではなく「回心」と呼んでいる。英語ではconversionであり方向転換を意味する。主イエスは言う。「医者を必要とするのは、健康な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招いて悔い改めさせるためである」(ルカ5:31-32)と。ルカ福音書では、金銭に執着する者の末路や愚かさを引き合いに、主イエスとの出会いによって個人が「回心」する物語、そして「回心」からはじまる「喜び」へと読者を導く。(2024.10.20)